記事 | PAYSAGE-お気に入りの食器たち

2025/07/06 05:39


神道の「清め」思想と都市インフラの幸福な出会い

江戸の町は 17 世紀半ばに人口 100 万人を突破しながら、ロンドンやパリのような大疫病に悩まされることはほとんどありませんでした。そこには、徳川幕府が主導した大規模な上水道と、人々の暮らしに根づいた 「穢れを払い、清めを行う」という神道的価値観 が密接に関わっています。本記事では以下の三つを軸に、江戸の水道がいかにして世界最先端となり得たのかを探ります。

  1. 上水道が造られた政治的・技術的経緯

  2. 同時期の世界主要都市と江戸の比較

  3. 神道の「清め」思想が社会的合意形成をどう後押ししたか


1. 幕府が大金を投じた理由――井戸だけでは都市を支えられない

江戸の地理的ハンディ

  • 低湿地ゆえ井戸水に塩分が混じりやすい

  • 人口の急増で飲料水が枯渇寸前に

主な上水道の誕生

  • 神田上水(1590年代)

    • 徳川家康が江戸城下の飲料水不足を解決するために整備

  • 玉川上水(1653年)

    • 玉川兄弟が多摩川上流から清水を引く大工事を敢行

    • 木製の水道管(木樋)が町家まで張り巡らされ、防火用水・農業用水も兼ねる

官民協働のメンテナンス

  • 漏水箇所は町内が費用を負担して即修繕

  • 幕府は水質検査と主要施設の維持を担当

  • 公共料金(上水銭)が制度化され、財源として機能


2. 江戸と世界の衛生ギャップを可視化する

ロンドン(17~19 世紀前半)

  • テムズ川の水をポンプで汲み上げるものの、汚水も同じ川へ垂れ流し

  • コレラが 1830 年代~1850 年代にかけて大流行

パリ(同時期)

  • 井戸やセーヌ川頼みで、上水道は王侯向けに限定

  • 庶民は汚染水を使用し、衛生状態は劣悪

北京・イスタンブル

  • 井戸や地下水路(カナート)が中心で、大都市化にインフラが追いつかず

ニューヨーク

  • 19 世紀半ばにクロトン水道が完成するまで井戸と川に依存

対照的に江戸では、17 世紀半ばには都市全体へ清水が配水され、上水と下水が分離されていた――これが世界的にも類例の少ない成功要因でした。


3. 「清め」思想がもたらした三つの社会的効果

  1. 料金への納得感

    • 神道では水で穢れを祓うのが日常作法。

    • 「清らかな水は共同体を守る」という共通価値があったため、町人は上水銭を比較的受け入れやすかった。

  2. インフラの神格化と保全

    • 玉川上水の取水口近くにはが建立され、水源を“神の恵み”として祀った。

    • 破壊行為や不正使用への心理的抑止力が働き、保全が徹底。

  3. 既存生活習慣との親和性

    • 手水舎・湯屋(銭湯)・打ち水など、水を用いた清め行為が庶民生活に浸透。

    • 上水の普及は「便利な新習慣」ではなく、「いつもの作法を安全かつ豊かにする手段」として歓迎された。


4. 江戸が示した持続可能な都市モデル

  • 上水と下水の完全分離により、飲料水の汚染を回避

  • 汚泥の肥料化や不用物の再資源化でリサイクル経済を実現

  • 火災に強い都市:各町が上水を即座に防火用水として利用

これらは現代のサステナブルシティが掲げる理念と驚くほど共通しています。江戸は「清め」をきっかけに、官民協働で社会インフラを最適化した好例なのです。


5. いま私たちが取り入れたい“清め”の視点

  • 朝一杯の白湯で内側からリセット

  • お気に入りの器を丁寧に洗い、拭き上げて水滴も穢れも残さない

  • 季節の草花を一輪挿しに活け、空間の気をフレッシュに

北欧食器やポーリッシュポタリーは、滑らかな釉薬で汚れが落ちやすく水切れも抜群。江戸の「清め」のエッセンスを、現代の食卓へ気軽に取り入れられるアイテムです。


まとめ

江戸の上水道は、

  • 政治的意思(幕府の主導)

  • 高度な土木技術

  • 神道が育んだ清潔志向という文化的土壌

この三要素が有機的に結びついて実現した“世界最先端のインフラ”でした。大都市の急拡大が続く今日こそ、江戸の知恵に学び、「清め=衛生行動」をアップデートすることで、より豊かな都市生活を築いていきたいものです。


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