記事 | PAYSAGE-お気に入りの食器たち

2025/07/01 05:52


本格的なパスタを手にしたとき、表面にざらざらとした質感を感じたことはありませんか? あるいは逆に、つるんと光沢のあるパスタに美しさを感じたこともあるかもしれません。

その違いの秘密は、実はパスタを成形する工程と、その際に使われる“ダイス(口金)”の素材にあります。

この記事では、パスタの製造工程の一部である「押し出し成形」と、ブロンズダイスとテフロンダイスによる仕上がりの違い、さらに日本で手に入る代表的なブランドや、伝統製法を守る「カンポフィローネ」タイプのパスタについてもご紹介します。


パスタはどうやって作られるのか?──押し出し成形とは

パスタには主に2つの製法があります。
ひとつは「ロール製法(生地を延ばしてカット)」、もうひとつが、スパゲッティやペンネ、フジッリといった立体的な形状に用いられる「押し出し成形(エクストルージョン)」です。

押し出し成形の流れ:

  1. ミキシング(混練)
     デュラム小麦のセモリナ粉と水を混ぜて生地を作成。

  2. 押し出し
     生地はスクリューで押し出され、ダイスを通って形が成されます。

  3. カットと整形
     ダイスから押し出された生地を所定の長さでカット。

  4. 乾燥工程
     低温・長時間乾燥で風味を閉じ込め、保存性を高めます。

この「ダイスの材質」が、パスタの表面の質感と仕上がりに大きな影響を与えます。


ブロンズダイス:ざらつきが美味しさを引き立てる

青銅製のブロンズダイスは、金属特有の摩擦によって、生地の表面に微細なざらつきを生じさせます。これにより、パスタはマットな質感に仕上がり、ソースの絡みも抜群。

ボロネーゼ、アマトリチャーナ、濃厚なチーズソースなど、粘度のあるソースと相性が良く、プロの料理人にも好まれるタイプです。

日本で手に入るブロンズダイス使用の代表ブランド:

  • Martelli(マルテッリ) – 少量生産、濃厚な小麦の風味

  • Rummo(ルンモ)Lenta Lavorazione – しっかりした歯ごたえ

  • Mancini(マンチーニ) – 自社農場で栽培したセモリナを使用、繊細な味わい


テフロンダイス:つるんとした光沢と効率性

フッ素樹脂でコーティングされたテフロンダイスは、生地との摩擦がほとんどなく、表面がつるつるの光沢仕上げになります。のどごしが良く、見た目も美しいため、大量生産品に多く採用されています。

軽めのトマトソースやスープ、オイル系パスタに向いています。

テフロンダイスを使用している代表ブランド(日本で流通):

  • Barilla(バリラ) – 安定した品質で定番の家庭用パスタ

  • De Cecco(ディ・チェコ)一部製品 – 主にブロンズですが一部テフロン仕上げもあり

  • 業務スーパーやPBブランド商品 – コスト重視の大量生産に適した仕上がり


カンポフィローネ:伝統の手延べパスタ、その2つの顔

イタリア・マルケ州の小さな町「カンポフィローネ」は、特別な手延べパスタの産地として知られています。

この地域で作られるMaccheroncini di Campofilone(マッケロニ・ディ・カンポフィローネ)には、以下の2タイプがあります:

1. 【卵入りタイプ】:伝統的な手延べ製法

  • 卵の含有量が非常に高く(全卵35%以上)、水を使用しないのが特徴

  • シート状に延ばし、極細にカット

  • 低温・長時間乾燥で独特の風味とコシ

  • 食感は繊細で、のど越しが非常に滑らか

このタイプは、押し出し成形を使用せず、ダイスを通らないため、ブロンズやテフロンによる質感とは全く異なる“手延べならでは”の上品なパスタです。

▶ 日本で入手可能な例:
La Campofilone(ラ・カンポフィローネ) – 濃厚な卵の風味と極上の口当たり

2. 【卵なしのセモリナ+水タイプ】:現代向けの汎用モデル

近年では、卵を使わず、デュラム小麦のセモリナ粉と水のみで作られる**“普通タイプ”のカンポフィローネ製パスタ**も登場しています。伝統製法の町でありながら、消化の軽さやヴィーガン対応を求める消費者向けに、こうした商品が増えています。

このタイプは、伝統的なカット・乾燥製法はそのままに、より軽やかで現代的な食感が楽しめます。

▶ ブランド例(日本でも入手可能):
La Campofilone "Senzo Uova"(卵なし)シリーズ
軽いソースとの相性が良く、日常の食卓でも取り入れやすい一品です。


食器との相性でもっと楽しく、もっとおいしく

パスタの仕上がりに応じて、合わせる器を選ぶのも楽しみのひとつ。
ブロンズ仕上げのざらついたパスタには、マットな質感の北欧食器や、温もりあるポーリッシュポタリーがよく似合います。
一方、つるりとしたテフロン仕上げのパスタや、カンポフィローネの繊細な卵パスタには、釉薬の美しい陶器を合わせると、食卓が一層引き立ちます。


まとめ

  • パスタの表面の質感は、使用するダイス(ブロンズ or テフロン)で大きく変わる。

  • ブロンズダイス:ざらざら。ソースの絡みが良く、伝統的な風味。

  • テフロンダイス:つるつる。見た目が美しく、軽い食感。

  • カンポフィローネには、卵をたっぷり使った手延べタイプと、卵なしの軽やかな現代型がある。

  • それぞれの製法や食感に合わせて、器選びやソースも工夫すると、より豊かなパスタ体験が味わえる。


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