記事 | PAYSAGE-お気に入りの食器たち
2025/06/18 05:46
朝の食卓にふわっと香ばしい匂いが立ちのぼる――
アジの干物を炙ったときの、あの食欲をそそる香り。
日本の食卓にとって「干物」は、ごく当たり前の存在です。でも、この文化って実はとてもユニークなんです。
今回は、そんな日本の干物文化を中心に、世界各地の干物や歴史的背景をたどってみたいと思います。
■ 干物とは?日本の伝統的な保存食
干物とは、魚介類を塩漬けやみりん漬けなどにしたあと、風通しの良いところで乾燥させた保存食のこと。
一見素朴ですが、塩加減、乾燥の具合、使う魚の種類などに職人技が光る、非常に奥深い加工食品です。
代表的な日本の干物
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アジ(鯵):もっとも親しまれている干物。脂の乗ったものは絶品。
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ホッケ:北海道や東北地方で定番。大ぶりで食べ応えあり。
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サンマのみりん干し:甘辛くて香ばしい一品。
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イカの一夜干し:酒の肴としても人気。
地方ごとに特色があり、伊豆の天日干し、能登の寒干しなど、その土地ならではの風と太陽を活かした干し方があります。
■ 世界にもある干物文化
日本だけでなく、実は世界中に「干物」に相当する文化はあります。ただし、加工法や使われる魚種、食べられるシーンは異なります。
● ポルトガル:バカリャウ(干しダラ)
タラを塩漬けにして干した「バカリャウ」は、ポルトガルの国民食。
復活祭やクリスマスなどの伝統行事でも欠かせない存在で、煮込みやグラタン風に調理されます。
● 韓国:中国・韓国:干しイワシやスルメ
韓国では「ミョルチポックム」と呼ばれる甘辛い炒め物や、スルメのように乾燥したイカ類が定番。
中国でも干し魚(魚乾)は炒め物や煮物に使われ、発酵の工程を加える地域もあります。
● 北欧・ロシア:ストックフィッシュ
タラなどを寒風で乾燥させた「ストックフィッシュ」は、北欧やロシアで長年保存食として利用されてきました。固いまま保存し、水戻しして煮込み料理などに使用します。
● アフリカや中南米:太陽と塩の干物
乾燥した気候を活かし、塩を使った日干しの干物が主流。保存性が高く、輸送や商業利用を前提としたものが多く見られます。
■ 干物のはじまり ― 人類最古の保存技術?
干物のルーツは非常に古く、冷蔵技術がない時代において「乾燥させること」は最も原始的な保存手段でした。
古代エジプトやメソポタミアでも魚の干物が食べられていた記録があり、日本でも縄文時代の貝塚から干した魚の痕跡が発見されています。
干物は単なる保存法ではなく、味を凝縮させる“調理”の第一歩として、世界中で育まれてきたのです。
■ 日本の干物が特別な理由
世界中に干物文化があるにも関わらず、日本の干物は「食卓の中心」にある点で特異です。
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朝食の定番(白ごはん+味噌汁+干物)
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贈答品やお歳暮としての高級干物
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一夜干しやみりん干しなど、味付けのバリエーション
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各地域に根付いた「名物干物」文化
このように、日本の干物は日常と特別のあいだを行き来する、奥深い存在。
保存食でありながら、焼くだけでごちそうになるというポテンシャルを持っています。
■ ポーリッシュポタリー × 干物? 食卓の新しい景色
干物=渋い、地味、という印象を持たれがちですが、
例えば北欧食器やポーリッシュポタリーに盛りつけることで、いつもの焼き魚がぐっとおしゃれに、映える食卓になります。
ネイビーやグリーンを基調としたプレートに、アジの開きをのせてみると、まるでカフェのモーニングのような雰囲気に。
手仕事の器は、干物の素朴な美味しさととてもよく合います。
■ おわりに
干物はただの保存食ではなく、地域、歴史、気候、文化が育んできた、奥深い食の遺産です。
そして日本においては、それが「毎日の暮らしの中に溶け込んでいる」ことこそが最大の魅力。
いつもの干物も、器を変えて、食べ方を少し工夫するだけで、新しい楽しみ方が広がりますよ。
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