記事 | PAYSAGE-お気に入りの食器たち

2024/11/11 15:33

雪景色の中で輝く赤い胸、黒いつぶらな瞳。白地に描かれたその小鳥たちは、ポーランドの伝統工芸品「ポーリッシュポタリー」の中で、ひときわ心を惹きつける存在です。

この愛らしい小鳥には、美しい伝説が込められています。はるか昔、十字架上のイエス・キリストの傷から棘を抜こうとした小鳥の胸が、キリストの血で赤く染まったというのです。慈愛に満ちたその行為は、代々語り継がれ、今もポーランドの人々の心に深く刻まれています。

マグカップの表面には、赤い胸の小鳥たちが青い花々と松葉の装飾に囲まれて、優美な輪舞を描いているかのよう。白地に映える藍色の花と深い緑の松葉模様が、鳥たちの赤い胸元をより一層引き立てています。

各工房の職人たちは、何世代にもわたってこの伝統的な模様を描き継いできました。一つ一つ手作業で丁寧に施される絵付けには、ポーランドの人々の信仰と美意識が見事に調和しています。

冬の訪れを告げるこの小鳥は、ポーランドでは希望と祝福の象徴とされています。厳しい寒さの中でも鮮やかな姿を見せるその姿は、まさに生命力の象徴といえるでしょう。

食卓に置かれたこの器は、単なる日用品以上の存在。キリスト教の慈愛の精神と、ポーランドの豊かな文化が結実した、まさに「暮らしの中の芸術品」なのです。

手に取るたびに、はるか彼方のポーランドの地で語り継がれる物語に、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。