記事 | PAYSAGE-お気に入りの食器たち
2025/05/05 05:43

春の光がやわらかく差し込む季節。庭先や野山で、まるい葉を広げる植物を見かけることがあります。それが「フキ(蕗)」か「ツワブキ(石蕗)」か、見分けがつきにくいという声をよく耳にします。今回は、このふたつの植物の違いと、特にツワブキの美味しい調理法について詳しくご紹介いたします。
見た目はそっくり。でも異なる植物
どちらも丸く大きな葉を持ち、キク科に属する多年草ですが、フキとツワブキは別の植物です。
フキの葉は、ややマットな質感で薄く、表面に細かな毛が生えており、ややザラつきがあります。春の初めに花芽「ふきのとう」が先に顔を出し、香り高く、ほろ苦い早春の味として愛されています。
一方で、ツワブキの葉は厚みがあり、表面にしっかりとした光沢があります。常緑で冬も葉を保つため、古くから和風の庭に植えられる観賞植物としても親しまれてきました。花の時期は秋で、鮮やかな黄色い花が咲き、季節の移ろいを静かに伝えてくれます。
ツワブキは食べられる?──はい、手を加えれば立派な春の味に
見た目からは想像しづらいかもしれませんが、ツワブキの若い葉柄(茎のような部分)は、春の山菜として食べられます。西日本では「つわ」と呼ばれ、煮物や炒め物などに用いられる郷土の味でもあります。
ただし、アクが強いため、必ず下処理が必要です。観賞用に育てているツワブキであっても、無農薬であれば食用に活用することが可能です。
ツワブキの美味しい料理法(詳しい下ごしらえとレシピ)
◆ 1. 収穫と下処理
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若くやわらかい葉柄を選びます。葉が開きすぎているものや古いものは筋張っていることがあります。
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表面の繊維質を指や包丁の背で剥きます。
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熱湯に重曹をひとつまみ加え、3〜5分ほど茹でたあと、冷水にとってさらします。
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そのまま2〜3時間水に浸け置きすると、えぐみがしっかり抜けます。
◆ 2. 基本の煮物(つわの含め煮)
【材料】(2〜3人分)
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ツワブキ(下処理済み)…200g
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だし汁…200ml
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醤油…大さじ1と1/2
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みりん…大さじ1
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酒…大さじ1
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砂糖…小さじ1(お好みで)
【手順】
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ツワブキを5〜6cmに切り揃えます。
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鍋に調味料とだし汁を入れて煮立たせ、ツワブキを加えます。
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落とし蓋をして、弱火で15〜20分煮含めれば完成です。
しっかりとした歯ごたえと、だしの染み込んだ素朴な味わいは、春のごはんのお供にぴったり。豚肉や油揚げを加えると、さらに深みのある仕上がりになります。
美しい器と春の山菜──器選びもまた季節の楽しみ
丁寧に仕上げたツワブキの煮物は、そのままでも充分魅力的ですが、器によってその趣は一層引き立ちます。
たとえば、落ち着いた青や緑を基調としたポーリッシュポタリーの小鉢に盛れば、ツワブキの緑が柔らかく引き立ち、まるで和の庭が食卓に広がったような印象に。
また、白地に繊細な柄が映える北欧食器を使えば、和の素材がモダンな趣に変わり、現代的な“和洋折衷”のテーブルコーディネートが完成します。
おわりに
「フキ」と「ツワブキ」──見た目は似ていますが、季節、用途、育ち方、味わいまで、それぞれ異なる個性を持った植物です。観賞用として目を楽しませてくれるツワブキが、少し手をかけることで食卓にのぼる春のごちそうに変わる。そんな自然との関わりこそ、日本の四季を感じる暮らしの豊かさではないでしょうか。
春のひととき、身近な植物に目を向け、その味わいと美しさを、器とともに楽しんでみてはいかがでしょうか。
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