記事 | PAYSAGE-お気に入りの食器たち
2025/04/13 06:02

「セキュリティ対策として、パスワードは定期的に変更すべき」
長年そう信じられてきました。しかし、この考え方はすでに過去の常識になりつつあります。
現在では、むやみにパスワードを変更することが、かえってセキュリティを弱めるという見方が一般的です。実際、アメリカの標準化機関や多くの専門家もこの立場を支持しています。
本記事では、なぜ「パスワードの定期変更」が推奨されないのか、その理由と、代わりに取るべき効果的なセキュリティ対策について詳しく解説します。
1. 定期変更は人にとって不自然で非効率
そもそも、強力なパスワードを数か月ごとに変更し、その都度覚え直すことは、多くの人にとって現実的ではありません。
その結果として、以下のような“形だけの変更”が行われがちです:
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「password2024」→「password2024spring」→「password2024summer」など、微細な改変
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紙にメモする、スマートフォンのメモ帳に記録する
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短く覚えやすい(=破られやすい)パスワードを選ぶ
このようにして、パスワードの質そのものが低下し、セキュリティはむしろ脆弱になるという逆効果を生んでしまいます。
2. パスワードの定期変更は攻撃の防止にならない
「万が一漏洩していたとしても、定期的にパスワードを変更していれば被害を抑えられる」
この考え方は一見正しく見えますが、現実のサイバー攻撃ははるかに高速かつ巧妙です。
パスワードが漏洩した場合、攻撃者はすぐに悪用を試みます。 3か月後に変更しても、それでは間に合いません。
では、どうすればよいのでしょうか?
答えは、「強くて破られにくいパスワードを設定し、頻繁には変えない」こと。
そして、本当に必要なとき(漏洩が疑われるときなど)にのみ変更することが効果的です。
2-1. 破られにくいパスワードの条件と具体例
強力なパスワードを作るには、次のポイントを意識しましょう:
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12文字以上(可能であれば16文字以上)
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英大文字・小文字・数字・記号のすべてを含める
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辞書に載っている単語を単独で使わない
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他のサービスと同じパスワードを使い回さない
例:強力なパスワード
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G7@kR9!vZp#xBq2L
(完全ランダム型、16文字) -
W1nTer@2025_Sky!
(季節や年号を交えた覚えやすい構造) -
Piano3*River+Moon9
(意味のある単語を組み合わせつつ強度を確保)
例:危険なパスワード
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password123
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abcd2024
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qwerty
これらは、総当たり攻撃や辞書攻撃ですぐに破られてしまいます。
パスワードの安全性は長さと複雑さが決め手です。
たとえば16文字以上であれば、現代のコンピュータを使った総当たり攻撃でも解読は非常に困難になります。
また、すべてのパスワードを覚えるのは現実的ではないため、パスワードマネージャー(1Password、Bitwarden、iCloudキーチェーンなど)の活用を強くおすすめします。
3. 米国のセキュリティ基準も「定期変更」を否定
実は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は、2017年に発表したパスワードガイドラインの中で、こう明言しています。
“Verifiers SHOULD NOT require memorized secrets to be changed arbitrarily (e.g., periodically).”
「記憶ベースのパスワードは、理由なく(例えば定期的に)変更するよう強制すべきではない」
つまり、パスワードの定期変更を義務付けること自体が推奨されないという立場です。
世界のセキュリティ基準はすでに、「定期変更は不要」という方向へとシフトしています。
4. パスワードを変更すべき「本当のタイミング」
それでも、パスワードの変更が必要になるケースはあります。以下のような場合には、速やかに変更を行いましょう:
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サービス側で情報漏洩が発生したとき
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自分のアカウントが不正アクセスを受けた形跡があるとき
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パスワードが他人に知られた可能性があるとき
このように、実際のリスクが確認されたときにだけ、的確に変更するのが理にかなったセキュリティ対策です。
まとめ:これからのパスワード管理の考え方
もはや、「定期的なパスワード変更」はセキュリティ対策として有効ではありません。
これからの時代に求められるのは、以下のような本質的な対策です:
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長くて強固なパスワードを設定する
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パスワードは使い回さない
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パスワードマネージャーで一元管理する
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多要素認証(MFA)を併用する
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漏洩の兆候があれば即座に対応する
“形だけの安心感”よりも、“実効性のある対策”を重視する——
それが、今後の情報セキュリティにおいて重要な姿勢です。